こんにちは。
税理士の佐竹と申します
近年、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の価格が高騰し、投資家の注目を集めています。これに伴い、暗号資産を相続するケースも増加していますが、相続税や所得税といった税金が関係するため、適切な知識を持って対応することが重要です。特に、暗号資産の売却益は原則として「雑所得」として課税され、相続税と合わせると実質的な税率が100%を超える場合もあります。
本稿では、暗号資産を相続した場合に考慮すべき税務上のポイントと対策について解説いたします。
※2020年より、金融庁は「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」へと変更しており、本稿でも「暗号資産」の表記を用いています。
1. 暗号資産も相続財産として相続税の対象になる
暗号資産は法定通貨ではありませんが、相続財産として相続税の対象となります。相続時の評価は、被相続人が亡くなった日の時価に基づいて行われます。例えば、ビットコインを相続した場合、その評価額は相続開始日のビットコインの市場価格を基に計算されます。
2. 相続税と所得税の負担
相続税は相続財産の合計額に基づき課税されます。相続税の計算方法は複雑で、相続人の人数や課税対象の財産額によって異なりますが、累進課税である相続税の税率は最高55%に達する場合もあります。暗号資産の評価額が高い場合、その分相続税の負担も増加することになります。
さらに、相続後に暗号資産を売却した場合、売却価格から相続時の時価(取得価額)を差し引いた金額が「雑所得」として課税対象となります。最大で55%(所得税45%+住民税10%)の税率が適用される可能性があり、これに相続税税率を加えると、税率が実質的に100%を超えるケースが出てきます。
なお、納付した相続税額の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」の制度がございますが、こちらは譲渡所得についての特例であり、暗号資産の売却については「雑所得」に区分されており、現状この特例を適用することはできません。
3. 相続手続き上の課題
暗号資産の相続では、相続人が被相続人の暗号資産の保有状況を把握できていない場合が多々ございます。また、所有していたことが分かっても取引のためのIDやパスワードが分からない場合や、取引所口座が海外にある場合など、手続きが煩雑になることもあります。
4. 対策:生前の準備と資産の整理
このようなトラブルを防ぐため、以下の対策が考えられます。
①相続財産の一覧を作成しておく
暗号資産に限りませんが、相続財産の把握が難航する場合も多いです。
中でも、暗号資産については、ご本人しか所有していることを把握できていないケースも多く見受けられます。そこで、ご自身が所有する資産について事前におまとめいただき、暗号資産についてはその保有情報や、取引所の口座情報、相続が発生した場合の手続きなど詳細を記載して保管しておくことで、相続時の混乱を防ぐことができるかと思われます。
ただし、安全性には十分に配慮した方法で管理していただけますよう、ご留意ください。
②現金化や他資産への転換の検討
暗号資産は価格変動が大きく、相続や売却のタイミングにより、納税負担が過大になることがあり、現金化に手間がかかる場合も多いです。そのため、生前に売却して現金化したうえで相続人に引き継ぐ、あるいは事前に他の資産に転換しておくことも有効な対策となりえます。
5. まとめ
暗号資産の相続や売却には、税務上の負担や手続き上の困難が伴うことが多く、十分な準備と知識が求められます。生前からの資産整理や、相続後の売却タイミングの見極めなど、個々の状況に応じた対応が重要です。ご不安がある場合は、税理士などの専門家に相談し、適切な対策を講じることを強くおすすめします。