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土地建物の一括購入時の按分

2017.10.10

お世話になります。税理士の山方です。
今回は、不動産購入時の契約額に関する話をします。

1.土地・建物の按分額でその後の税負担が変わる?

例えば1億円の中古物件が2つ(A物件・B物件)あるとします。
A物件は土地2,000万円、建物8,000万円の合計1億円。B物件は、土地5,000万円、建物5,000万円の合計1億円。
どちらも同じ1億円ですが、実はその後発生する家賃収入に対する税負担は異なることとなります。
結論としては、A物件(建物8,000万円)の方が、B物件(建物5,000万円)より税負担は少なくて済みます。
この原因は、建物の取得価額は減価償却を通じて費用計上できるのに対して、土地の取得価額は原則として費用計上できない為です。
A物件は、最終的に総額8,000万円の費用計上ができるのに対して、B物件は5,000万円しか費用計上できません。費用計上額が大きい方が、所得(利益)金額は小さくなるため、税負担も少なくて済みます。
総額では、どちらの物件も1億円を支出していますが、建物部分の金額が大きい方が、買主にとってはその後の税負担が少なくて済むこととなります。

2.土地・建物の按分額の決め方

土地と建物の金額の割合により、其の後の税負担に影響があるということは、税務署もその金額には目を光らせています。
それでは、土地と建物のそれぞれの金額はどうやって決まるのでしょうか?
不動産譲渡契約書に土地・建物のそれぞれの金額の記載がある場合は、基本的にその金額が土地・建物のそれぞれの金額となります。ただし、記載された金額が、相場に比して著しくかい離があると認められる場合は、税務署から指摘を受ける可能性があります。
それでは、契約書に土地建物の合計額の記載のみで、それぞれの金額の記載がない場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、合理的な割合により土地と建物の価額を按分することになります。実務上は土地と建物の固定資産税評価額の割合により、按分する事が多いです。また別の方法として、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する方法も実務上使われます。いずれの方法も、税務署から指摘される可能性は低いです。

3.土地・建物一括購入時の留意点

土地と建物を一括購入する際、買主側にとっては建物の金額が高い方が、税務上有利に働きます。土地と建物の金額は一義的には、買主と売り主の合意による契約によります。売り主の同意が得られるのであれば、できる限り建物が高くなる割り振りによる契約書を作成する事をお勧めします。
しかし売り主が法人などの場合は、建物の金額を小さくすることを主張してくる場合があります。これは売り主側にとっては、消費税等の観点から、建物の金額が小さい方が税務上有利になる事が多いからです。実務上土地建物の割り振りについては、買主側と売り主側で主張が異なることも多いです。
土地と建物の合計額のみが契約書に記載している場合は、自ら割り振りを決める事となります。この場合は、固定資産税評価額の比率による按分が基本ですが、鑑定士による鑑定評価額等の他の合理的な方法も取り入れながら、有利な割り振りを検討する事をお勧めします。

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筆者紹介

山方 越志
税理士法人 田崎・太田事務所
税理士

私は、これまで相続税の申告に30件以上携わらせて頂いています。相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。税理士事務所において、相続税の申告は通常1年に1回あるかないかと言われる状況から鑑みますと、かなりの件数をこなしているものと自負しております。 「相続対策」と聞くと節税対策を連想する方が多いのではないでしょうか? 実際、対策を打つことで相続税額が大幅に減少するケースは多数あります。しかし相続税を支払うのは財産を持っているご本人様ではなくその相続人様です。この考えから、財産をお持ちの方の中には「自分が死んだ後の財産や相続税には興味がない。」といった方も多いように見受けられます。 しかし私は本来の「相続対策」とは、ご本人様の為にこそ必要と考えております。「相続」という言葉の意味は、「次々と続いていくこと。」だそうです。その人が亡くなった後も、その人が生きてきた事実はいろいろな形で周りの人に受け継がれ生き続けるのだと思います。それは目に見えるものもあれば、目に見えないものもあるでしょう。その中で「相続財産」とは、その人が引継ぎ守り築いてきた、目に見える人生の証です。 節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

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